『Rec/レック』

先週末より公開されているスペイン製ホラー映画『Rec/レック』を鑑賞してきました。 →公式サイト
以前、特殊脚本家の小中千昭さんがウェブサイトで「今、注目しているのはスペインのホラー」という趣旨のことを書いていらしたことがありました。『Rec』は小中さんが紹介していた『機械じかけの小児病棟』のジャウマ・バラゲロ監督の新作*1ということで、日本公開が決まってから楽しみにしていたものです。

機械じかけの小児病棟 [DVD]

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『Rec』は、決して目新しいモチーフを扱っているわけではありません。むしろ、ホラー映画のひとつの定番の題材といえます。
それを取材カメラの視点で記録していくという手法も、かつて『邪願霊』や『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』、ごく最近では『クローバーフィールド』でも使われていたものです。
しかし、それらの作品では、取材カメラ視点という手法は、実際のドキュメント映像を見るように、「誰かの体験したことを映像を通じて追体験する」というリアリティを与えるに留まっていました。『Rec』でも、当初感じるのはそれと同じよう“ドキュメントを見るリアリティ”です。
ところが、映画が進んでいくにつれて、いつしか観客はカメラと視点を共有します。そして、あたかも自分がその場に登場人物と一緒にいて、そこで起きることをともに体験するような感覚を覚えます。そのリアルタイムな臨場感は、これまでの映画では体験し得なかったものです。『Rec』の終盤で私がスクリーンを観ながら感じた緊張感は、ここ数年、映画で感じたことのないものでした。
ただひとつ、残念だったのは、キリスト教文化圏で育った人間であれば、より深く感じられるのであろう怖さを、私は感じ取ることができなかったことです。この作品が持つ怖さを100%理解することは、自分にはできない。それが、どうにももどかしく感じてしまいます。

*1:『Rec』はパコ・プラサ監督との連名

円谷チャンネル

すでにあちこちで話題となっていますが、円谷プロダクションYouTubeで公式チャンネルを開設しました。
『Q』『マン』『セブン』の各1話に、おお『ミラーマン』もある、『ブースカ』もある、なんと『ボーンフリー』もあるぞ! と配信動画一覧を観て軽く興奮しました。
公式動画配信だけでも素晴しいんですけど、より嬉しいのは、こうやって自分のブログやサイトに動画を貼れることですね。

公式チャンネルだと、けっこう外部に貼るのは禁止になっているところが少なくありませんが、YouTubeの魅力のひとつって、自分のブログなどで簡単に動画を貼れるところだと思います。
自分のブログの中で円谷作品が流せるようにしてくれているのはほんとに素晴しいです。

『チェスト!』

舞台となる鹿児島で先行公開されヒットを記録している『チェスト!』が、4月19日から全国公開となっています。 →公式サイト
4キロの遠泳大会出場に向けて、互いの絆を深めていく小学生3人が軸となった作品です。作品のメインのターゲットとなるのは、彼らと同世代の小学生くらいの子供たちだと思いますが、大人が観ても感じるものがたくさんある作品であり、むしろ大人が観るべき映画ではないだろうかと思っています。
映画の中でこんなセリフがあります。「かっこよければ、子供たちは真似をします」。このセリフは、主人公の隼人が学ぶ武道の先生の言葉です。最近、現実の社会では子供が関係する事件がたくさん起きています。「今の子供はおかしいんじゃないか」などという意見もよく聞きます。でも、それってほんとに子供たちだけのせいなの? 今の大人たちが、かっこいい姿を見せられていないからじゃないの? 自分たちがちゃんとしてるか、かっこいいか、大人自身がもう1度考えてみようよ。そんな映画の作り手のメッセージを、このセリフには感じました。
だからといって、この映画は大人たちがちゃんと子供たちを指導すべきなんだ、というような主張をしているわけでもありません。映画の中では、大人もすべての答えを持っているわけではないことがはっきりと描かれています。子供の疑問や悩みに大人として意見を言うことはできるけれど、それは決して絶対の正解ではなくて、ほんとうに彼らを救う答えは、子供たちが自分自身で見出していくしかない。子供を救うことはできないんだけど、でも一緒に考えることはできるはず。だから、せめて真摯に子供たちに向きあってみませんか? それが、この映画の持つメッセージだと思っています。
それらのテーマを決して大上段に構えることなく、楽しんで観られる作品の中に織り込んでいるのは見事です。
そして、主人公・隼人を演じる高原賢人くん、陰のある転校生・智明を演じる御厨響一くん、ユーモラスだけど芯の強い雄太役の中嶋和也くんら、小学生たちを演じた子役たちのいきいきとした演技が素晴しいです。特に御厨くんは翳りを持った表情が、撮影当時12歳とは思えないほど。今後どんどん活躍していくんじゃないかな。学年の優等生・敦美役の宮崎香蓮さんも、ただただ美少女っていうのではなく、悩んだり、迷ったりする12歳の女の子というリアリティを感じさせています。
もちろん、彼らを見守ったり、ときに彼らに励まされたりする大人たちを演じる、高嶋政宏さん、羽田美智子さんらの存在感も見事です。
さらに、小学校教師役には松下奈緒さんや北村栄基さんというフレッシュな俳優さんたち。親世代、子供世代、その間の若い世代それぞれが、登場人物それぞれに自分を重ねあわせることができると思います。


なお、遠泳大会が題材で教師役に松下奈緒さんということで、彼女の水着姿を期待する方もいるかもしれませんけど、プールや海での指導シーンもあるものの、そこで着ているのは腕や脚も覆ったスーツタイプのものです。期待した方、残念でした(笑)。

『ねこのひげ』

先週より、渋谷シアター・イメージフォーラムで『ねこのひげ』という作品がレイトショー上映されています。それぞれ離婚を経験して同棲生活をはじめた一組カップルを中心に、彼らの周囲の人々の日常を描いた作品です。
よくある映画のように、映画の中でドラマティックな大きな事件が起こるわけではありません。その意味ではかなり変わった映画かもしれません。しかし、スクリーンの中で登場人物たちの繰り広げる日々の生活を観ているうちに、それが映画であることを忘れ、自分も映画の中に入って、知人の家に遊びに行き、そして彼らの心の動きにフッと触れたような、そんな感覚を覚える映画です。
観終わったときの感覚は、映画を鑑賞したあとというより、むしろのどかな休日を親しい人と過ごしたような、そんな気持ちになれる作品です。
そして、この映画の中では登場人物たちがよく食べたり、飲んだりします。その様子が、すごく美味しそう! きっと、映画を観終わったら、誰かと食事に行きたくなるはずです。
公式サイト


そうそう、ホラー映画好きの視点でひとつ付け加えておくと、藤貴子さんと松山鷹志さんという『呪怨』シリーズのすべての元凶となった夫婦役コンビが、同じシーンで共演しているのも注目です(笑)。

Girl's BOX ラバーズ☆ハイ

3月29日からやはりQ-AXシネマでレイトショー公開になっているのが『Girl's BOX ラバーズ☆ハイ』。
女性アイドルが集まった「Girl's BOX」というプロジェクトから生まれた劇場用作品で、DRMの長谷部優さんら「Girl's BOX」の中心メンバー5人がメインキャストをつとめています。
それぞれに挫折を経験した5人の少女たちが、自分たちの目標に向かって奮闘する姿を描いた青春ストーリー。特にどの作品に似ているというわけではありませんが、1980年代のアメリカの青春映画の雰囲気を感じます。
作品の核となるのは、あくまで「夢」と「友情」。通常、多くの劇映画で不可欠となる「恋愛」の要素はほとんどありません。それによってストーリーはスッキリしているし、また女性アイドルがメインキャストをつとめる映画として、恋愛の要素が希薄なのはある意味正しいと思います。ただ恋愛の要素がまったくないのではなく、秋本奈緒美さんと小木茂光さんという、大人の共演者ふたりがその部分を担っているのもうまいところです。
中心となる5人の女の子はもちろん、脇役も含めてキャラクターがみな魅力的。観たあとにさわやかな気持ちになれる1本です。
さて、この作品の佐藤太監督は、かつて金子修介監督などの助監督をつとめており、金子監督の『ガメラ』シリーズにも参加しています。そして脚本は金子監督の実弟金子二郎さんによるもの。金子監督に縁の深いおふたりが関わっているということを踏まえてみると、劇中で印象的に使われる「あるセリフ」にニヤリとさせられるかもしれません。

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アクエリアンエイジ 劇場版

3月22日から公開されているのが『アクエリアンエイジ 劇場版』。同名のカードゲームが原作ということですが、申し訳ないことに原作についてはよく知りません。
主人公の高校生・日下部要の周りで起こる奇妙な事件。やがて要は、古代から地球の覇権を争ってきた種族の血が自分に流れていることを知る……というストーリーです。
この種の設定の作品は、ライトノベルやコミック、アニメなどでは成立しても、実写映画化すると、実際の俳優が演じるゆえにその設定の現実離れした部分が目立ってしまい、違和感を生じてしまうことが少なくありません。この作品では、作品全体を、現実からは少しずれた生活感のない世界にすることによって、違和感が生じるのを回避しています。この現実からのずらし方が実に巧みです 。
もう一点、巧みさを感じさせるのが、スケールの大きさを出す演出です。この作品の持つ世界設定はひじょうに壮大なスケールのもので、おそらくそれをストレートに映像化しようとすれば、ハリウッド超大作なみの予算が必要でしょう。この作品はそれほどビックバジェットではないはずですが、ある手法を使うことで、実際に映像として描かれる以上の壮大な広がりを作品に与えています。どんな手法をとっているかは、実際に劇場でご覧になっていただきたいです。
ミュージカル「テニスの王子様」で主役を演じた桜田通さんが主演、共演に「仮面ライダー響鬼」で明日夢役だった栩原楽人さんなど若手男優陣を揃えた作品で、メインターゲットには若い女性層が想定されているのだと思いますが、年齢、性別を問わず楽しめる作品となっていると思います。

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さて、もうひとつ個人的にここがこの映画の見どころ! という部分があるのですが、それはちょっとネタバレっぽくなってしまうので「続きを読む」にしておきます。

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