「視点」の恐怖

2月17日をもって、映画『王様ゲーム』の東京での上映が終了しました。12月の公開から2ヶ月を越えるロングランは、異例のヒットと言えると思います。
地方によってはまだ上映が継続中、さらにこれから公開となる地方もあるようです。また、少し先の6月となりますがDVD・Blu-ray Discのリリースも発表となっています。機会があれば、ぜひご覧になっていただきたい作品です。


王様ゲーム』は、「視点」が重要な意味を持つ作品でした。
「視点」は、あるときは異常な状況に見舞われた教室という空間の緊張感を伝え、あるときは登場人物同士の関係を表現し、そして物語の根幹をなすある事柄も「視点」によって示されています。
言葉で説明するのではなく「視点」で語る。それは小説やコミックといったほかのジャンルではできない、映画・映像作品ならではの表現です。映画『王様ゲーム』は映画・映像作品の醍醐味を味わわせてくれる作品であったと言えるでしょう。


さて、「視点」を英語にすると「Point of View」。略して“POV”は、映像の世界では特に主観映像を示す言葉として使われています。
この言葉をタイトルにした『POV〜呪われたフィルム〜』が、いよいよ2月18日より公開となります。
「ふたりの若手女優が恐怖を体験する」というストーリーの『POV』は、まさに「視点」そのものが恐怖となる作品になっています。


『POV〜呪われたフィルム〜』は、モキュメンタリーの手法を用いたホラー映画です。
モキュメンタリーによるホラーは、近年では『パラノーマル・アクティビティ』、過去にも『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』と、海外の作品でポピュラーとなりましたが、日本では20数年前にすでにモキュメンタリーによるホラー作品が作られていました。1988年のオリジナルビデオ作品『邪願霊』です。
『邪願霊』はその後の日本のホラー映画で用いられる心霊表現のルーツでもあり、ホラー映画のひとつの時代の幕開けとなった作品だと言えます。
『POV〜呪われたフィルム〜』の公開にあたり、『POV』の鶴田法男監督と『邪願霊』の石井てるよし監督の対談という、夢のような企画を担当させていただくことができました。fjmovie.comで記事が掲載されています。

http://www.fjmovie.com/main/interview/2012/02_pov.html

『邪願霊』について、初めて明らかになる事実も多いと思います。もちろん『POV』についても両監督に深く語っていただいております。より『POV』を深く楽しんでいただける材料となる記事になったと思っています。ぜひご覧ください。

「ふたりのヒロイン」の系譜

映画『王様ゲーム』は、ふたりのヒロインを中心として物語が進んでいきます。
異常な状況に戸惑いつつも真相にたどりつこうとする本多智恵美と、クールに状況を見つめる不思議な少女・岩村莉愛のふたりです。
この「ふたりのヒロイン」という構図は、鶴田法男監督のこれまでの作品のいくつかにも共通して見られる要素です。


まず、オリジナルビデオ作品としてリリースされた1996年の『亡霊学級』。つのだじろうさんの同名恐怖漫画の映像化作品です。原作は1話ごとに舞台の異なる連作短編的な作品ですが、鶴田監督の映像版は原作のエピソードを巧みに活かしつつ、オリジナルの長編ストーリーとなっています。
主人公は宮澤寿梨さんが演じる女子高生・ユリ。彼女と、親友のアヤのふたりが体験していく恐怖が描かれていきます。
『亡霊学級』以前はリアルな実話怪談系の作品が多かった鶴田監督が、それまでとは違ったテイストで作られた作品で「図書館」が重要な場所として登場するなど、ふたりのヒロインという部分以外にも『王様ゲーム』との共通点を見つけることもできます。映画『王様ゲーム』の原点とも言える作品だと思います。


次に、伊藤潤二さんのコミックを原作とした2001年の劇場公開作品『案山子 -KAKASHI-』。この映画のヒロインは、野波麻帆さん演じるかおると、柴咲コウさんが演じる泉のふたり。異常な状況に「巻き込まれていく」ヒロインと、その異常な状況の鍵を握るヒロイン。そのふたりの対比が注目です。また、この「巻き込まれていく」ヒロインと「鍵を握る」ヒロインという視点で『王様ゲーム』を観てみると面白いのではないでしょうか。


そして、楳図かずおさんの名作漫画を映画化した2008年公開の『おろち』。ある宿命ゆえに愛憎を繰り広げる一草と理沙の門前姉妹と、姉妹を見つめる美少女・おろち。メインのヒロインが3人登場しますが、対立する姉妹、おろちと一草あるいは理沙の関係と、3通りの「ふたりのヒロイン」という構図で観ることもできると思います。超越的な位置から状況を見るおろちの姿には『王様ゲーム』の莉愛を重ねることもできるかもしれません。
『おろち』と2004年公開の『予言』は「心霊ではないものがもたらす恐怖」に鶴田監督がアプローチした作品です。映画『王様ゲーム』も、この2作と同じ流れの上にある作品と見ることができるでしょう。


実は、映画『王様ゲーム』は、鶴田監督の参加以前に脚本が先行して進められていた作品なのですが、それが意外に思えるほど、これまでの鶴田監督の作品から自然に連なる流れを感じることのできる作品です。映画『王様ゲーム』は、企画と監督との幸福な出会いに恵まれた作品であったと思います。
映画『王様ゲーム』で初めて鶴田監督の作品をご覧になった方は、ぜひここで挙げた作品やほかの鶴田監督の作品をご覧になっていただき、映画『王様ゲーム』に至る流れを感じていただければと思います。
現在新品での映像ソフト入手が難しい作品もありますが、レンタルビデオ店を探すと在庫しているお店もけっこう見つかると思います。



さらに「ふたりのヒロイン」の系譜はまだ続きます。
明けて2012年2月18日、鶴田監督の最新作『POV〜呪われたフィルム〜』が公開されます。志田未来さんと川口春奈さんという現在大活躍中の若手女優ふたりがヒロインをつとめ、彼女たちが「実際に体験した」恐怖がスクリーンで公開されます。
王様ゲーム』とは異なったアプローチによるホラー『POV〜呪われたフィルム〜』は、鶴田監督作品の究極のかたちと言えるかもしれません。この作品にもご注目ください。

『王様ゲーム』

人気ケータイ小説をホラーの名匠・鶴田法男監督のメガホン、アイドルグループ・Berryz工房℃-uteの出演で映画化した『王様ゲーム』、12月17日(土)の公開が近づいてきました。もうプレミア上映会も始まっているようですね。
公式サイト

私は試写で一足早く拝見させていただきました。現在主流となっているホラー映画の表現とは一味も二味も違った雰囲気の作品となっています。個人的には「ホラー映画」と呼ぶよりも「恐怖映画」という呼び方がふさわしい作品ではないかと思っています。ホラー映画がブームとなり、現在もたくさんの作品が世に送り出されている中で『王様ゲーム』は「ジャパニーズ・ホラーの先にあるもの」を示してくれる作品となっていると思います。
そして『王様ゲーム』は特殊な状況におかれた高校生たちの群像劇でもあります。登場人物ひとりひとりがひじょうに魅力的です。決して「主人公とその他大勢」ではなく、クラスの生徒32人がそれぞれきちんと人格を持った人物として映画の中に存在しています。一度映画を観たあとで、脇役の登場人物の誰かひとりに注目してもう一度最初から観てみると、また別の楽しみ方ができるでしょう。
また、長回しワンシーンワンカットの多用など、凝った映像にも注目です。
ホラー映画が好きな方には、鶴田監督が今回どのように恐怖にアプローチしているかを、そしてホラーが苦手という方も、キャストのみなさんの魅力を楽しみに、ぜひ劇場に足をお運びいただければと思います。


王様ゲーム』関連でふたつほど記事を担当させていただきました。よろしければご覧ください。

ホラー映画の可能性を示す『怪談新耳袋 怪奇』

9月4日より公開になる『怪談新耳袋 怪奇』を試写で拝見させていただいたとき、かなりの興奮を覚えました。
私は1990年代から日本のホラー映画*1を好んで観てきました。しかし、ここ数年はホラー映画の状況に、ある種のもどかしさのようなものを感じていました。
1998年の劇場版『リング』や、2003年の『呪怨』などのヒット作品が生み出されたことで、ホラー映画は日本の映画界の中で確固たる地位を築いてきました。
たくさんの新作ホラーが作られ、劇場公開すればお客さんが入って、DVD化されればヒットする。それは喜ばしいことであるのですが、一方で次々と生み出されていく新作が、日本のホラー映画が90年代から積み上げてきたものを消費するだけになっているのではないかという想いもありました。
ホラー映画は、いままで作り上げてきた方法論を繰り返してルーティンワークのように新作が作られる“できあがったジャンル”になってしまったのではないか。そんなことを思っていました。


怪談新耳袋 怪奇』は、ホラー映画がジャンルとして定着し多くの作品が生み出されている現在の状況を、明確に意識して作られていると思います。そして『いまホラー映画がなにを描くのか』という回答を提示する作品になっています。
そういう明確な意図を持ったホラー映画が作られたことを嬉しく感じました。


興奮を覚えた理由はもうひとつあります。
怪談新耳袋 怪奇』の脚本を担当されている三宅隆太さんには、昨年、三宅さんが脚本・監督をつとめた『呪怨 白い老女』が公開された際にインタビューをさせていただきました*2。『呪怨 白い老女』と、安里麻里監督の『呪怨 黒い少女』が公開されたときには多くのメディアにインタビュー記事が掲載されたと思いますが、その中でも濃い内容の記事にできたのではないかと自負しています。
そのインタビューで三宅さんにお話しいただいた三宅さんのホラー観が、今回の『怪談新耳袋 怪奇』ではかなりストレートなかたちで出ています。自分自身が手がけたインタビューの内容が実際に作品の中に登場するという状況に興奮を覚えました。昨年のインタビュー記事は『怪談新耳袋 怪奇』をより深く理解する上でのガイドとなるであろうと確信しています。


主演の真野恵里菜さんの存在も『怪談新耳袋 怪奇』について特筆すべきことのひとつでしょう。
お芝居をするときに、たとえば「いまこの登場人物はこういう状況におかれていて、こういう気持ちになっている。だったらこういう演技をすればいい」というように、方程式で導くようにしてお芝居をする俳優さんは多いと思います。
おそらく、真野恵里菜さんはそういうやり方ではお芝居をしていません。
真野さんは、台本に書かれた登場人物の心境に自らを置いて、そこで自分の中から出てきたものをお芝居として表現しているのだと思います。だから、型にはまった “哀しみ”や“戸惑い”という「記号」ではなく“哀しみ”や“戸惑い”がダイレクトな「感情」としてスクリーンから伝わってくる。それは決して訓練で身につくものではなく、真野恵里菜さんの持っている優れた資質だと思います。
もちろん、篠崎誠監督が真野さんから引き出したものや、三宅隆太さんの脚本によって真野さんの中から引き出されたものも大きいでしょう。しかし、真野さんが篠崎監督や三宅さんから引き出したものも小さくないはずです。もし真野恵里菜さんが主演でなかったら『怪談新耳袋 怪奇』はまったく違った方向性の作品になっていたに違いありません。
前述したように『怪談新耳袋 怪奇』では、脚本の三宅さんのホラー観がストレートなかたちで出ています。そのストレートさは、真野さんという主演女優を得たことで、三宅さんと篠崎監督が選択し得たものだと思います。


黒沢清監督と共著で「恐怖の映画史」を著すなど、ホラー映画への造詣の深さで知られ、満を持してホラー映画のメガホンをとった篠崎監督。多くのホラー映画を手がける日本ホラー映画界きっての俊英・三宅隆太さん。そして、スクリーンを通じて感情を伝えることのできる真野恵里菜さん。
ふたりの優れたホラー映画クリエイターと素晴らしい女優の、奇跡のようなコラボレーションで生まれた『怪談新耳袋 怪奇』は、ホラー映画の持つ可能性を見せてくれる作品です。


『怪談新耳袋 怪奇』公式サイト


※fjmovie.comには私が取材・構成を担当した篠崎誠監督のインタビューが掲載されています(『怪談新耳袋 怪奇』篠崎誠監督インタビュー)。ぜひそちらもお読みください。

*1:ここでは劇場用映画だけでなく、テレビ用作品やオリジナルビデオ作品も含めて“ホラー映画”とします

*2:fjmovie.com掲載:『呪怨 白い老女』三宅隆太監督・『呪怨 黒い少女』安里麻里監督インタビュー

『ソフトボーイ』

6月19日から公開中の『ソフトボーイ』を観てきました。
予告編などからは、『ウォーターボーイズ』のような、ライトでコミカルなスポーツ青春ものを想像する方が多いと思います。実際、そんな“ライトでコミカルなスポーツ青春もの”でもあるんですけど、『ソフトボーイ』はちょっとひねくれているんです。ストレートの速球が来るかと思っていたらなんか不思議な変化をして、でもど真ん中ストライク。そんな映画です。
構えているところをすっとすかされて、「いやー、努力と友情だけじゃうまくはいかないっしょ」とニヤリと笑う監督の顔が浮かんで見えるようです。でも、決してシニカルに笑うだけではなくて、根本にあるのは限りなく優しい視線。それがさわやかな後味を残してくれる、心地よい青春映画です。


公式サイト

ゼロ年代映画ベストテン

はい、とうとう前回の更新から1年以上このブログを放置しちゃいました。
さすがにこのまま2009年1度も更新なしで終わってはいかんと。ちょうどゼロ年代最後の年ということで、あちこちで「ゼロ年代ベストテン」という企画を見ることも多いので、私も2009年最初で最後の更新として「ゼロ年代映画ベストテン」を書くことにしました。

世界は彼女のためにある(2005年/保坂大輔

自分がまだここまで映画で興奮できるのだということを確認させてくれた作品です。保坂監督は2009年には清水崇監督『戦慄迷宮3D』の脚本を担当。今後の活躍も楽しみです。

ドニー・ダーコ (2001年/リチャード・ケリー

ストーリーに謎の多い作品という評価も多かったようですが、個人的には解釈するのではなく、そういう作品として受け取るべき映画ではないかと思っています。日本では劇場未公開となってしまったリチャード・ケリー監督の第2作『サウスランド・テイルズ』はまだ未見。

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すみれ人形 (2008年/金子雅和)

自分が恵まれていると思うのは、数年に一度「あなたはこういう映画が好きなんでしょ?」と、自分でも気づかなかった嗜好を教えてくれるような作品に出会えていることです。『すみれ人形』もそんな作品のひとつです。

すみれ人形 [DVD]

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カミュなんて知らない (2006年/柳町光男

約2時間のフィルムだけでなく、この映画を作る行為そのものが『カミュなんて知らない』という柳町光男監督の作品であったのだと思います。そして映画を観た者は映画について考え、語ることでその作品に参加することができる。いまだに終わることなく、今後も終わらない作品。

カミュなんて知らない [DVD]

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叫 (2007年/黒沢清

1990年代から国産ホラー映像作品を追ってきた私にとって、ゼロ年代半ばを過ぎて黒沢清監督が送り出したこの作品は刺激的でした。“ジャパニーズ・ホラー”がひとつの様式として確立した感のある現在、もう一度“怖さ”について問いかけてみる黒沢監督の実験であったように感じています。

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スカイ・クロラ The Sky Crawlers (2008年/押井守

押井守監督が若い世代に向けての明確なメッセージを持った作品を作ったということが私にとっては衝撃的な出来事でした。

スカイ・クロラ [DVD]

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レディ・イン・ザ・ウォーター (2006年/M・ナイト・シャマラン

壮大なファンタジー巨編のような構造を持った物語をひとつのアパートの中という閉じられた空間で展開させるという手法がユニーク。ファンタジー巨編がいくつも公開された時代だからこそ成立し得た作品だと思っています。

レディ・イン・ザ・ウォーター [DVD]

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青い鳥 (2008年/中西健二

決して饒舌に語ろうとはしない映画。感情すらわかりやすく説明することが好まれるいま、そんな静かな映画がしっかりと存在することの頼もしさを感じます。この映画のあり方自体が、映画の主人公である村内先生の孤高な姿に重なっていきます。

青い鳥 [DVD]

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チェイサー (2009年/ナ・ホンジン)

映画が終わったときに感じるのは、どうしようもないやり切れなさ。そして個の無力さ。それを妥協なく見せてくる、その力強さに脱帽。

ブギーポップは笑わない (2000年/金田龍)

みんながどこかでリンクしていて、でも当事者たちには全貌は見えない。ゼロ年代ベストテンを考えているとき、そんな作品が2000年に公開されていたのがなにか面白い出来事のように感じました。

ブギーポップは笑わない [DVD]

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以上が私のゼロ年代映画ベストテンです。洋画の場合は日本での公開年を表記しています。
ゼロ年代”を意識して作品を選んでみると「この作品はこの年のベストワンではないけれどゼロ年代を考えると入れておきたいな」というふうに、単純に各年のベストが並ぶわけではなかったのが面白いところでした。

というわけで2009年最初で最後の更新でした。次の更新は……2010年代映画ベストテンにならないようにはしたいと思います(笑)。

『東京残酷警察』

西村喜廣”というお名前を初めて意識したのは、たしか2006年に単館公開された井口昇監督の『おいら女蛮』を観たときだったと思います。この作品で特殊メイク・造形を担当していたのが西村さんでした。
永井豪作品の映像化であるこの作品は、『遊星からの物体X』や『ヴィデオドローム』など、1980年代の作品を思い出させるような特殊メイク・特殊造形が印象に残りました。CG全盛となっている昨今、表面が粘液で覆われたようなグチャグチャした質感が、懐かしいと同時に新鮮に思えたものです。

おいら女蛮 [DVD]

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『おいら女蛮』と同じ年に、山本淳一・山口雄大監督の『MEATBALL MACHINE』が公開。西村さんが特技監督をつとめたこの作品では、やはりグチャグチャ系の特殊メイク・造形に加え、常識外れの量の血のりを使った、激しいスプラッタ描写にも唖然とさせられました。
MEATBALL MACHINE-ミートボールマシン- [DVD]

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そして今年、井口昇監督の『片腕マシンガール』が公開。西村さんは特技監督に加え“残酷効果”という新たな肩書きでクレジットされています。この作品でも規格外のスプラッタ表現と、思わず目を背けたくなるような痛さあふれる特殊効果がてんこ盛りでした。


ただ、このころまでは、それらの描写は監督のアイディアありきなのだろうと思っていました。「井口監督も山口雄大監督も、こんな描写を思いつくとはなんてえげつない人たちなんだろう。その要求にこたえなければならない西村さんも大変だなあ」と思っていたのです。

それは大きな間違いでした。
きっと井口監督も雄大監督も、すごく良識あふれるまともな人たちに違いないのです。だからこそ『MEATBALL MACHINE』や『片腕マシンガール』は、あの程度の描写に“とどまって”いたのです。
西村さんの初監督作となる映画『東京残酷警察』が10月4日に公開になりました。→公式サイト
近未来の東京を舞台に、民営化された警察と、“エンジニア”と呼ばれるミュータントの壮絶な闘いを描いたSFバイオレンスアクション。全編にわたり『MEATBALL MACHINE』や『片腕マシンガール』はまだ序の口だったのだと思わせられる残酷描写のオンパレードです。
その残酷描写に乗せて描かれるのは、永井豪の漫画版「デビルマン」を彷彿とさせる、果たして善悪とはなんなのか? というテーマ。凄まじいパワーで迫ってきます。そのパワーは、生半可な気持ちで観たら負けてしまいそうになるほどのもの。しっかり身構えて鑑賞しましょう。

愛蔵版 デビルマン (KCデラックス)

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