『東京残酷警察』

西村喜廣”というお名前を初めて意識したのは、たしか2006年に単館公開された井口昇監督の『おいら女蛮』を観たときだったと思います。この作品で特殊メイク・造形を担当していたのが西村さんでした。
永井豪作品の映像化であるこの作品は、『遊星からの物体X』や『ヴィデオドローム』など、1980年代の作品を思い出させるような特殊メイク・特殊造形が印象に残りました。CG全盛となっている昨今、表面が粘液で覆われたようなグチャグチャした質感が、懐かしいと同時に新鮮に思えたものです。

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『おいら女蛮』と同じ年に、山本淳一・山口雄大監督の『MEATBALL MACHINE』が公開。西村さんが特技監督をつとめたこの作品では、やはりグチャグチャ系の特殊メイク・造形に加え、常識外れの量の血のりを使った、激しいスプラッタ描写にも唖然とさせられました。
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そして今年、井口昇監督の『片腕マシンガール』が公開。西村さんは特技監督に加え“残酷効果”という新たな肩書きでクレジットされています。この作品でも規格外のスプラッタ表現と、思わず目を背けたくなるような痛さあふれる特殊効果がてんこ盛りでした。


ただ、このころまでは、それらの描写は監督のアイディアありきなのだろうと思っていました。「井口監督も山口雄大監督も、こんな描写を思いつくとはなんてえげつない人たちなんだろう。その要求にこたえなければならない西村さんも大変だなあ」と思っていたのです。

それは大きな間違いでした。
きっと井口監督も雄大監督も、すごく良識あふれるまともな人たちに違いないのです。だからこそ『MEATBALL MACHINE』や『片腕マシンガール』は、あの程度の描写に“とどまって”いたのです。
西村さんの初監督作となる映画『東京残酷警察』が10月4日に公開になりました。→公式サイト
近未来の東京を舞台に、民営化された警察と、“エンジニア”と呼ばれるミュータントの壮絶な闘いを描いたSFバイオレンスアクション。全編にわたり『MEATBALL MACHINE』や『片腕マシンガール』はまだ序の口だったのだと思わせられる残酷描写のオンパレードです。
その残酷描写に乗せて描かれるのは、永井豪の漫画版「デビルマン」を彷彿とさせる、果たして善悪とはなんなのか? というテーマ。凄まじいパワーで迫ってきます。そのパワーは、生半可な気持ちで観たら負けてしまいそうになるほどのもの。しっかり身構えて鑑賞しましょう。

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