『チェスト!』

舞台となる鹿児島で先行公開されヒットを記録している『チェスト!』が、4月19日から全国公開となっています。 →公式サイト
4キロの遠泳大会出場に向けて、互いの絆を深めていく小学生3人が軸となった作品です。作品のメインのターゲットとなるのは、彼らと同世代の小学生くらいの子供たちだと思いますが、大人が観ても感じるものがたくさんある作品であり、むしろ大人が観るべき映画ではないだろうかと思っています。
映画の中でこんなセリフがあります。「かっこよければ、子供たちは真似をします」。このセリフは、主人公の隼人が学ぶ武道の先生の言葉です。最近、現実の社会では子供が関係する事件がたくさん起きています。「今の子供はおかしいんじゃないか」などという意見もよく聞きます。でも、それってほんとに子供たちだけのせいなの? 今の大人たちが、かっこいい姿を見せられていないからじゃないの? 自分たちがちゃんとしてるか、かっこいいか、大人自身がもう1度考えてみようよ。そんな映画の作り手のメッセージを、このセリフには感じました。
だからといって、この映画は大人たちがちゃんと子供たちを指導すべきなんだ、というような主張をしているわけでもありません。映画の中では、大人もすべての答えを持っているわけではないことがはっきりと描かれています。子供の疑問や悩みに大人として意見を言うことはできるけれど、それは決して絶対の正解ではなくて、ほんとうに彼らを救う答えは、子供たちが自分自身で見出していくしかない。子供を救うことはできないんだけど、でも一緒に考えることはできるはず。だから、せめて真摯に子供たちに向きあってみませんか? それが、この映画の持つメッセージだと思っています。
それらのテーマを決して大上段に構えることなく、楽しんで観られる作品の中に織り込んでいるのは見事です。
そして、主人公・隼人を演じる高原賢人くん、陰のある転校生・智明を演じる御厨響一くん、ユーモラスだけど芯の強い雄太役の中嶋和也くんら、小学生たちを演じた子役たちのいきいきとした演技が素晴しいです。特に御厨くんは翳りを持った表情が、撮影当時12歳とは思えないほど。今後どんどん活躍していくんじゃないかな。学年の優等生・敦美役の宮崎香蓮さんも、ただただ美少女っていうのではなく、悩んだり、迷ったりする12歳の女の子というリアリティを感じさせています。
もちろん、彼らを見守ったり、ときに彼らに励まされたりする大人たちを演じる、高嶋政宏さん、羽田美智子さんらの存在感も見事です。
さらに、小学校教師役には松下奈緒さんや北村栄基さんというフレッシュな俳優さんたち。親世代、子供世代、その間の若い世代それぞれが、登場人物それぞれに自分を重ねあわせることができると思います。


なお、遠泳大会が題材で教師役に松下奈緒さんということで、彼女の水着姿を期待する方もいるかもしれませんけど、プールや海での指導シーンもあるものの、そこで着ているのは腕や脚も覆ったスーツタイプのものです。期待した方、残念でした(笑)。