『Rec/レック』

先週末より公開されているスペイン製ホラー映画『Rec/レック』を鑑賞してきました。 →公式サイト
以前、特殊脚本家の小中千昭さんがウェブサイトで「今、注目しているのはスペインのホラー」という趣旨のことを書いていらしたことがありました。『Rec』は小中さんが紹介していた『機械じかけの小児病棟』のジャウマ・バラゲロ監督の新作*1ということで、日本公開が決まってから楽しみにしていたものです。

機械じかけの小児病棟 [DVD]

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『Rec』は、決して目新しいモチーフを扱っているわけではありません。むしろ、ホラー映画のひとつの定番の題材といえます。
それを取材カメラの視点で記録していくという手法も、かつて『邪願霊』や『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』、ごく最近では『クローバーフィールド』でも使われていたものです。
しかし、それらの作品では、取材カメラ視点という手法は、実際のドキュメント映像を見るように、「誰かの体験したことを映像を通じて追体験する」というリアリティを与えるに留まっていました。『Rec』でも、当初感じるのはそれと同じよう“ドキュメントを見るリアリティ”です。
ところが、映画が進んでいくにつれて、いつしか観客はカメラと視点を共有します。そして、あたかも自分がその場に登場人物と一緒にいて、そこで起きることをともに体験するような感覚を覚えます。そのリアルタイムな臨場感は、これまでの映画では体験し得なかったものです。『Rec』の終盤で私がスクリーンを観ながら感じた緊張感は、ここ数年、映画で感じたことのないものでした。
ただひとつ、残念だったのは、キリスト教文化圏で育った人間であれば、より深く感じられるのであろう怖さを、私は感じ取ることができなかったことです。この作品が持つ怖さを100%理解することは、自分にはできない。それが、どうにももどかしく感じてしまいます。

*1:『Rec』はパコ・プラサ監督との連名