『人が人を愛することのどうしようもなさ』

石井隆監督の新作『人が人を愛することのどうしようもなさ』を観て圧倒されました。
公式サイト
主人公は、女優の名美。新作映画で名美自身と似た境遇の女優“鏡子”を演じる彼女が記者のインタビューに応えるという形で映画は進行していきます。
“名美”と“鏡子”、そして映画の中で“鏡子”が演じる役。映画の中の映画、さらにその中の映画という異なったレベルの虚構が、映画が進むにつれその境界を曖昧にし、観客の混乱を呼び起こします。それに加え、“名美”の設定には演じる喜多嶋舞さん自身を連想される部分があり、それが一層現実と虚構の混乱に拍車をかけます。
ラストはサイコサスペンスとしては予想のできる展開ではありますが、果たして約2時間の観てきたもの中でなにが現実だったのか? という、足元が揺らぐような感覚を残します。
その不確かな感覚の中で、ひとつだけ確かなのが、津田寛治さん演じるマネージャー・岡野が名美に向ける愛。この映画はひどく純粋なラブストーリーです。


全編が激しくエロティックな描写に満ちているため成人映画扱いの本作。そのために鑑賞を躊躇う方もいらっしゃるかも知れませんが、多くの方に観ていただきたい1作です。