出崎統監督作品『CLANNAD −クラナド−』

出崎統監督といえば、『ガンバの冒険』やら『あしたのジョー』やらで、幼少時に印象を深く刻み付けられたアニメ監督です。
その出崎監督の最新作は美少女ゲームを原作とした劇場作品だというのを知ったのがしばらく前。果たして、出崎監督が作ると美少女ゲームがどんなアニメになるのか? と興味を感じ、その作品『CLANNADクラナド−』を観てきました。 →公式サイト

実際に作品を観てみて、出崎監督の懐の深さを改めて思い知らされました。原作が児童文学だとか、スポ根ものだとか、SFだとか、美少女ゲームだとかは、出崎監督の前には些細な違いでしかない。もう“出崎アニメ”というのがひとつのジャンルで、どんな作品でも出崎監督の手にかかれば出崎アニメになってしまうのです。
止め絵のハーモニー処理やら入射光やら透過光やら画面分割やらスローモーションやら、これぞ出崎監督という独特な演出は本作でも健在。他愛もない高校生活を描くのにそれはやり過ぎじゃないですかと、思わず吹き出しそうになった箇所もいくつかありました。
しかし、それら大仰に見える演出も、登場人物たちの主観を表現していると考えると得心が行きます。端から見ればくだらないことでも、実際にそんな高校生活を過ごしている登場人物にとっては、本気で喜んだり、怒ったり、哀しんだり、楽しんだりと、なにもかもがかけがえのない時間。そんな彼らの目から見た時間を、出崎演出は鮮やかに画面に映し出してみせます。
そして、その瑞々しい時間と対極にある“絶望”を、これまた過剰とも思える演出で描く。それにより、ともすれば安易なメロドラマになってしまいかねないストーリーが、喪失と再生の物語として実に力強く迫ってきます。そのパワーに圧倒されました。

出崎監督は昨年同じメーカーの美少女ゲームを原作にした『Air』という作品も手掛けているようで、こちらもぜひ観てみたいと思っています。