7月後半〜8月前半公開の作品をまとめて

また前回の更新から1ヶ月以上空いてしまいました。この前の更新以降に公開された作品で興味深いものがたくさんあったので、もう公開が終了してしまった作品もありますが、短めで数本まとめていきます。

河童のクゥと夏休み

製作が発表になってからずっと楽しみにしていた作品。その期待通りの快作でした。
子供向け作品にしてはショッキングなシーンもあるし、残酷に思える展開もあります。そこには子供が生きていく中で向き合わざるを得ない現実を、真正面から向き合って描くという姿勢を感じました。それは、かつて原監督が手掛けた『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』に通じるものだと思います。
もうひとつ「クレしん」との共通点を挙げると、主人公の家族は若い夫婦と主人公の男児、その妹、そしてペットの犬という構成。「クレしん」の野原一家と同じ構成です。「クレしん」の数年後をよりリアル寄りに描いたのが本作と考えることもできるのかも。
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『いつかの君へ』

ミュージカル『テニスの王子様』で人気となった斎藤工さんと河合龍之介さんふたりが、惹かれあう男性同士を演じる作品。正直、観る前には果たしてどんな作品になっているのかと、ちょっと怖い部分もありました。しかし、堀江慶監督はリアルからはちょっとずれた世界を描くことで、この作品を爽やかな青春ストーリーへと昇華させています。
男性同士ということで、男女のラブストーリーだったら「これってちょっとベタ過ぎるよね」と思うような描写もできちゃっているところがあって、ある意味、普通の恋愛もの以上にピュアな恋愛譚となっています。
それに加え、後半の展開は堀江監督作品らしい湿っぽさもしっかりと漂わせています。ミステリーの要素もあって、ヒッチコックを意識したような演出が出てくるのも面白いところです。
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『夕凪の街 桜の国』

原爆投下から13年後の広島と、現代の東京。それぞれ異なった時代で生きるふたりの女性を主人公に、2部構成で描くこの作品は、現代まで残る戦争の傷跡を描きます。
戦争を題材にした映画、原爆を題材した映画は多くあります。しかし、この作品ほど、戦争が、そして原爆が、自分にとって無縁ではないのだと感じさせられた作品はありませんでした。この映画は決して「戦争の悲劇」を声高に叫ぶのではありません。しかし、だからこそ、戦争が残したものの意味を強く訴えかけます。
現代編の主人公を演じる田中麗奈さんは、20代後半の女性をナチュラルに好演。魅力的に年齢を重ねているなあと感じさせられました。
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彩恋

海に近い地方都市を舞台に、ココ、ナツ、マリネの仲良し女子高生3人組と、彼女たちを取り巻く人々の織り成す、いくつもの恋愛模様を描いています。
とにかく、登場人物みんなが魅力的です。そして、舞台となる街の風景や、出てくる車などが、すごく調和した独特の世界を作っています。大通りから少し離れたところにある、中にいるだけで気持ちのいい、センスの良い雑貨屋さん。そんな感じの映画です。
個人的にこの映画で一番好きだったのは、ある悩みを抱えるナツの弟に対する周りの大人たちの対応です。私もあんな風に若い人に接することのできる大人になりたいものです(笑)。
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