『こわい童謡』

今週末から公開される映画『こわい童謡』を一足早く鑑賞させていただきました。
これまでに『渋谷怪談』シリーズなどを手掛けてきた福谷修監督の新作で、まず前編にあたる「表の章」が公開され、3週間後に後編にあたる「裏の章」が公開されるという変則的な2部構成の作品となっています。→公式サイト
「表の章」は全寮制の女子高が舞台。合唱部員の主人公の周りで、童謡の歌詞に倣ったような惨劇が次々と起こっていきます。「表の章」だけを観た段階では、『こわい童謡』も、『渋谷怪談』シリーズのような、実話怪談テイストのホラー作品のように思えるかもしれません。
しかし、「表の章」の5年後を描く「裏の章」を観ると、その印象は一変します。「表の章」で残された謎が「裏の章」で解き明かされたとき、「表の章」で描かれていたものが、まったく違ったものとして受け止められるはずです。ある意味、「表の章」という作品の枠組みすらを壊してしまうような「裏の章」。ストーリーの内容だけではなく、作品のあり方自体が意欲的。実にエキサイティングなエンターテイメントとなっています。
出演する女優陣の魅力も見逃せません。「裏の章」主演の安めぐみさんは、音響分析官という聞きなれない設定の(しかし実在の)役どころに挑戦。冷静に事件を追っていくキャラクターを説得力もって演じています。
「表の章」で合唱部顧問を演じる霧島れいかさんの謎めいた雰囲気は見事。また、彼女の表情には「表の章」の謎の大きな手がかりが隠されています。
そして、「表の章」主演の多部未華子さん。「表の章」では、恐怖に立ち向かう主人公を好演しています。しかし、彼女の本当のすごさが発揮されているのは「裏の章」。その意味でも「裏の章」は必見です。


『こわい童謡』は、映画公開に先駆けて、福谷監督自身によるノベライズも発売されています。まだ未読ですが、映画の仕掛けが小説ではどのように表現されているのか楽しみです。

こわい童謡 (竹書房文庫)

こわい童謡 (竹書房文庫)

「裏の章」の主人公・宇田響子は福谷監督の小説『子守り首』にも同じ設定で登場しています。『子守り首』は『こわい童謡』と共通する要素も多く、姉妹編とも言える作品です。
子守り首 (幻冬舎文庫)

子守り首 (幻冬舎文庫)

この音響分析官・宇田響子というキャラクターの設定はユニークで、『子守り首』と『こわい童謡』の2作に登場するだけで終わるのはもったいない感じがします。“宇田響子の事件ファイル”みたいなかたちでシリーズ化しても面白いのでは?


直接『こわい童謡』と関連するものではないですけど、もうひとつ紹介。「表の章」の「全寮制の女子校とそこに転校してきた主人公」という設定で連想するのがこの作品。ダリオ・アルジェント好きな福谷監督らしい設定なのかもしれません。
サスペリア プレミアム・エディション [DVD]

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