『コワイ女』

先月の25日から『コワイ女』という映画が公開されています。雨宮慶太監督、鈴木卓爾監督、豊島圭介監督の3人が“怖い女”を共通のテーマに撮った3話からなるオムニバス・ホラー映画です。→公式サイト
近年の国産ホラーのトレンドを押さえた作品となっている雨宮監督の「カタカタ」、独特のタッチが異様な雰囲気を醸し出す「鋼−はがね−」、若手の豊島監督が土着的ホラーを手掛けているのが意外な「うけつぐもの」と、3本それぞれ個性あふれる、魅力的な作品となっています。
中でも、「鋼−はがね−」のインパクトは絶大です。ズタ袋を頭からスッポリと被り、脚だけが出ているという本作のヒロイン“鋼”は、ビジュアルはもちろん、劇中での行動も強烈な印象を残します。
そのキャラクターの持つインパクトの大きさから、「鋼−はがね−」からはスピンオフ作品も誕生しました。井口昇監督による1本1分の連作シリーズ『鋼ちゃん』です。もともと「鋼−はがね−」はフェティッシュな要素を持った作品ですので、そのスピンオフ作を以前からフェチ度の高い作品を手掛けてきた井口監督が撮ったというのは、私的にはすごく納得できます(笑)。
独特のジワジワと来る怖さを持っている「鋼−はがね−」本編とは異なり、井口版『鋼ちゃん』は至ってナンセンスなシュール・ギャグ作品となっています。オリジナル作と違った作風のスピンオフ作品というのは海外の作品では例がありますが、私は映像作品以外に永井豪マンガを連想しました。永井作品ではシリアスな作品のキャラクターが別の作品では同じ顔のマンマでひたすらナンセンスなギャグをやったりすることがあって、『鋼ちゃん』のノリにはそれに近いものを感じます。
「鋼−はがね−」、『鋼ちゃん』両作品とも、鋼を演じているのは女優の菜葉菜さん。主演作もあり、映画以外でもNHK教育テレビの「スペイン語講座」のレギュラーをつとめるなど幅広く活躍している菜葉菜さんが、なんと劇中では顔がまったく出ないという(「鋼−はがね−」では数カット写真のみで登場)役に体当たりで挑戦しています。その菜葉菜さんの熱演だけでも必見でしょう。
『コワイ女』は、東京ではシネマート六本木で公開中。大阪のシネマート心斎橋での上映は間もなく終了してしまうようですが、入れ替わりで名古屋での上映がスタートするようです。
『鋼ちゃん』は現在は東映モバイルサイトで配信されています。さらに、今後なんらかの形でリリースされる可能性もありそうです。
両作品とも、機会があればぜひ。