2007年作品雑感[劇場作品編]

アディクトの優劣感

劇場作品では、2007年末に近くなってから観たこの作品について。
アンダーグラウンドのカルチャーにスポットを当て、ドラッグなどの“刺激”を求めていく若者たちを作品。ストーリーの内容もですが、その作られ方もまた刺激的なものになっています。
この作品は、多くの部分が「デジタル・フォトアニメーション=デフォメ」と呼ばれる新たな手法によって作られています。これは、高画質のデジタルスチルカメラで連続撮影した静止画像に加工を施し、アニメーション的な映像に仕上げたものです。現在高画質のデジタルスチルカメラの解像度は長辺で4000ピクセル以上。ハイビジョン映像が1920×1080ピクセルですから、単純に考えると4倍以上の情報量を持っていることになります。もちろんその映像をそのまま上映することはできないので、変換されて最終的には通常の動画同様の解像度になってはいるはずですが、それでも元の画像が高画質だけに、仕上がった映像は通常の映像とは違った質感を持っています。背景のボケ味もスチルカメラの特性が活かされていると思います。
そしてこの作品に感じたのは、これが新たな映像表現の可能性を示唆する作品になっているのではないか、ということです。現在、ビデオカメラや動画編集ソフトが廉価になっているとはいえ、それでも映像作品を作るというのはまだ敷居が高いもののはずです。でも、この作品は動画ではなく静止画像と音というかたちであっても映画として成立するというのを示しています(もちろんそれは優れたスタッフ、キャストの存在によるものですが)。静止画像に音を加える、という手法ならば、より多くの人が「ああ、自分でもこういう作品を作ってみようかな」と乗り出せるのではないでしょうか。デジタルスチルカメラを用いた映像作品を、Youtubeなどの動画投稿サイトで発表する。そんな、個人レベルでもできる映像作品の発表の方向性もあり得ると思いました。
現在、渋谷Q-AXで公開されている本作、1月中旬まで公開は続くようです。公開期間中には、DJが生でBGMをプレイするという意欲的な試みもされているようです。詳しくは公式サイトで。

BL系映画

もうひとつ、2007年に印象に残ったのが、男性同士の恋愛を描いたボーイズラブ(BL)系の作品が多く製作・公開されたことです*1。もうずいぶん前から出版界ではBLがジャンルのひとつとして確固たる位置を占めていましたが、映像のフィールドでもこういう作品が出てくるようになったんだ、と思ったものでした。
作品によって、BLと意識しなければ青春物としても観られるような作品、ストレートにBLを扱った作品、といろいろなタイプのものがあり、まだ若いジャンルだけに作り手によってさまざまなアプローチがあることを感じさせます。多くの作品が作られたのは単に2007年の流行という可能性もありますが、出版界での定着振りを考えれば、映像でも今後コンスタントに作品が作られていくのではないかと思います。
こういう作品のファン層の方々というのは、割と厳しい批評眼をお持ちの方が多いのではないかと思いますし、作り手もさまざまな趣向を凝らしていく、面白いジャンルになっていくのでは、と思っています。

*1:ビデオ作品では以前からあったのかもしれませんが、一般劇場公開作は2007年になってから急に増えたはず