2007年作品雑感[テレビシリーズ編]

ULTRASEVEN X

10月から1クール深夜枠で放送。かつてのヒーローのキャラクターを使い、「1984」を思い出させるような“監視された社会の物語”をハードボイルドタッチで描くというのは面白いアプローチでした。従来のウルトラシリーズでは異色回とされるようなトーンで全話をとおしてしまうという大胆な試みができたのは、深夜枠ゆえの自由さでしょうか。
過去の作品をこのようなかたちで復活させることには批判的な意見もあると思いますが、元の作品はもう確固として揺るがないほどの大きな存在。このくらいの変化球は大いにありだと思います。
1月には早くもDVDがリリースとなるようです。

ULTRASEVEN X Vol.1 プレミアム・エディション [DVD]

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キューティーハニー THE LIVE』

同じく10月から始まり、こちらは現在も放送中のシリーズ。現在ちょうど折り返し点あたりになったのかな?
実はスタート前はあまり期待していなかったのですが、第1話のテンポ良く緩急巧みな演出にグッと引きこまれました。
シリアスでハードな部分とコメディっぽい部分が実にバランスよく配合されています。永井豪のコミック版に忠実なわけではありませんが、そのコメディとハードな部分の共存は永井作品のテイストに近いように感じます。
シリーズ構成もつとめている井上敏樹氏の人物造形には、氏のほかの作品とも共通する独特のいやらしさがあるんですけど、このシリーズではそれが効果的に働いている感じです。それからエピソードの中で笑いのポイントとしてゲスト的に出てきたのかな、と思っていた人物がその後のエピソードで重要なキャラクターになったりして、その構成にも感心させられました。
総監督・横山誠*1、脚本・シリーズ構成・井上敏樹、キャラクターデザイン・出渕裕、さらに演出に参加している田崎竜太というスタッフは映画『仮面ライダー THE NEXT』と重なるスタッフ陣。ここ数回の『ハニー』の展開には映画でのダブルライダー共演に通じるカッコ良さも感じたりしておりまして、今後の展開も楽しみにしています。

電脳コイル

2007年のテレビ作品で一番印象に残ったのがこれ。NHK教育テレビで5月から11月まで放送されたアニメシリーズです。
とにかく第1話を観て、こんなふうに日本的風景の中でサイバーパンクを描くってことが可能だったのかと目からウロコが落ちまくり。
現実とネットとの対比としての「あっち側」に、現世に対する異界としての「あっち側」を重ね合わせているのにも唸らされました。ネットという技術が当たり前のように使われるようになった結果、本来そのような技術と対極にあるはずの「呪い」といった“非科学的な”事象と結びついてとらえられていく。それはもしかしたら鋭い近未来予測になっているのかもしれません。本来の意味とはやや異なってくるかもしれませんが、「充分に発達した技術は魔法と見分けが付かない」というクラークの言葉を思い出しました。
また、このような題材を扱った作品では「バーチャルはしょせん虚構」的な描き方がされることが少なくない中、「バーチャルであってもそこに感じた気持ちは本物」というメッセージを言ってくれたのは爽快でした。2007年という現在に作られる作品であることを象徴していたように思います。
終盤の数話において説明台詞過多な印象があったのがやや残念ではありましたが、少女・少年の成長を軸とした良質のSFジュブナイルでありました。
第2話放送前に1話を再放送したり、本放送中に数話まとめて再放送をおこなったりという編成もありがたかったです。これによって、ネットや口コミでの評判を聞いた人が追いつけやすくなるんですよね。実際、私もmixiで感想を書いたところ、再放送で追いついて最終回まで見続けたマイミクさんがいたりします(笑)。

*1:仮面ライダー THE FIRST』『仮面ライダー THE NEXT』にはアクション監督として参加