『棚の隅』

名バイプレイヤーとして日本映画には欠かせない俳優・大杉漣さんの久々の主演作となる映画『棚の隅』が先週末よりシネマアートン下北沢で公開されています。 →公式サイト
原作は連城三紀彦さんの同名短編。大杉さんが演じるのは、小さなおもちゃ屋を営む男。妻と、前妻との息子と3人で暮らす彼の前に、かつて自分と息子を捨てた前妻が姿を見せるところから物語は始まります。
主人公の康雄、その前妻・擁子、現在の妻の秀子、擁子の恋人の進藤、登場人物たちはみな、どこか不器用です。そんな彼らが、お互いを思いながら繰り広げる人間模様。クライマックスで、それぞれが新しい道を進むために、康雄が擁子に投げかける言葉は、とても厳しいけれど、とても優しい。
これが劇場初監督作となる門井肇監督の演出は、ひとつひとつのシーンを丁寧に積み重ね、画面から優しさを感じさせます。
大杉さんはじめ、俳優陣はみな好演。特に、一見ぶっきら棒でいて、その中に誠実さを感じさせる進藤役の榊英雄さんが印象に残ります。
決して派手な作品ではありませんが、多くの方の心を打つ作品だと思います。それだけに、ミニシアターでの単館上映という公開形態になっているのは残念です。もっともっと広く観ていただきたい作品です。